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ワインを楽しむ時に「樽香」という言葉が使われることがあります。
フレッシュな果実の香りを楽しむワインの場合、樽熟成をせずに発酵終了後、少しステンレスなどの密閉性タンクで寝かせてから瓶詰・発売されることが多いのですが、ワインに深みや複雑性を付与するために樽熟成をしてワインを育成させることも行われています。
樽熟成・樽育成したワインについて知るために、ワインにおける樽の効用について考えてみましょう。
ワインは、アルコールとタンニン(渋みの成分)、酸によって熟成に耐えるようになっています。樽熟成は、普通のワインで白3年、赤5年程度の熟成が可能ですが、何十年も熟成に耐えるワインもあります。樽に詰められたワインは、温度と湿度が一定で振動の無い貯蔵庫で時を過ごします。
樽に入れる前のワインは濁っていますが、貯蔵中に滓(オリ)が沈殿し、徐々に透明になっていきます。また、醸造したての赤ワインに含まれる荒々しいタンニンが他の成分と重合して柔らかくなると共に、樽からの水溶性のタンニンがワインに溶け込み、アントシアニン色素と結合して色調が濃くなり安定化します。
さらに、樽からヴァニラやココナッツ、コーヒー、スモーキーな成分がワインに溶けだし、風味の複雑化がすすみます。
ワイン用の木樽に使われるものは、オーク材(学名:Quercus属)で、主にフランスに自生する2種類とアメリカ大陸に自生する1種類が使われます。
フランス産は、タンニンの溶出が多めで上品なヴァニラ香が特徴です。アメリカ産は、逆にタンニン少な目で、ヴァニラ香より甘みの強いココナッツ香が強くになります。
また、原木から樽材を切り出す方法が違い、効率の良い板目取りが出来るアメリカ産の樽の方が価格的に安くなっています。フランス産の樽材は、柾目取りのため20%ほどしか樽材に使えません。
切り出した樽材は、樹脂を多く含み、生木の匂いが強く、そのままでは使えません。「シーズニング」と言って自然乾燥させます。2~3年の間、屋外で太陽光や風雨にさらして乾燥と渋みのあるタンニンが洗い流し、表面に生えるカビの酵素の働きで、ココナッツ香などの成分が増加し、木材に含まれる苦み物質を取り除きます。
ワインに特有の樽の香りをつけるために樽の内部をトーストします。ウイスキー樽ではチャーリング(炭化)といって強く焼くのですが、ワイン樽の場合は軽く焦がす程度に焼きます。
ライト(L)、ミディアム(M)、ヘヴィ(H)と3段階に分けて焼きの強さを表現しますが、最近はミディアムより少し強めに焼いたミディアムプラス(M+)が人気です。樽の鏡と呼ばれる丸い板のところに表示されていることが多いので、ワイナリーに行ったら見てください。
トーストすることで生木の匂いはさらに減り、熱により樽材に含まれるリグニンが分解され、ヴァニラ香をもつヴァニリンが増え、オイゲノールというクローブやナツメグの香りをむもつ化合物も生成されます。
新樽の使用比率が大きい場合、こうした樽由来の香りが強く出やすく、何回か使用した旧樽になるほど樽香は弱くなります。
皆さんもワインを楽しむ時に、樽香を探ってみてください。
樽香が感じられたなら、フレンチ・オーク樽なのか、アメリカン・オーク樽なのか。新樽の比率はどれくらいだろうかなど、皆さんで推測してみるのもワインの楽しみの一つではないでしょうか。後で、WEBからワインを検索して情報を取ってみてください。
参考:「ボルドーでワインを造ってわかったこと」安蔵光弘氏著
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